2025年2月27日(木)RISC-V DAY TOKYO 2025 SPRING 出展者情報5:SiFive(米国)
RISC-V協会解説
以下は、SiFiveのJohn Ronco氏が最近の製品や戦略について語った内容を、日本語にまとめたものです。
SiFiveの最新動向:製品、戦略、業界のリーダーシップ
1. SiFiveの3つの主要な計算領域
SiFiveは、以下の3つの領域で製品開発を進めている:
- 組み込みプロセッサ
- 高性能CPU
- AI処理プロセッサ
2. 最近のニュース
① 第4世代 (Gen4) 組み込みプロセッサ
SiFiveの組み込みプロセッサは、32ビット/64ビットで構成され、創業以来、多くのチップに採用されている。
- 第4世代(Gen4)ではPPA(性能・消費電力・面積)向上や新機能の追加が行われた。
- **「ジェネレーター技術(Generator Technology)」**により、8種類のプロセッサが同時にリフレッシュされ、多様なカスタマイズが可能。
- その結果、従来のIPプロバイダーより柔軟な構成が可能になった。
Armの組み込み向けプロセッサ投資撤退
- Armは最近、Cortex-M/Rの開発リソースを削減し、組み込み市場での投資を縮小。
- **「これは、RISC-Vがすでに組み込み市場で勝ちつつある証拠」**とSiFiveは見ている。
- SiFiveは引き続き**Gen5(第5世代)**の開発を進めており、すでに一部顧客には初期バージョンを提供。
② ISO 26262 & ISO 21434 認証取得
- SiFiveのAutomotive向けプロセッサが、機能安全 (ISO 26262) とサイバーセキュリティ (ISO 21434) 認証を取得。
- この2つの認証を同時に取得したのは、全CPUアーキテクチャでSiFiveが初。
- これにより、RISC-Vの枠を超えた業界全体でのリーダーシップが確立。
③ HiFive Premier P550 開発ボード
- HiFive Premier P550 は、高性能RISC-Vプロセッサを搭載した開発ボード。
- 標準RISC-V仕様に完全準拠し、業界のリファレンスとして位置づけられる。
- 今後も複数の開発ボードを発表予定。
④ P870-D: インフラ向け高性能CPU
- P870-D は、インフラストラクチャ向けの高性能アウトオブオーダー (OoO) CPU。
- 3世代目の高性能プロセッサで、大規模システムのスケールアップに対応:
- RAS(Reliability, Availability, Serviceability)機能を搭載
- AMBA CHIインターフェースを初採用し、スケーラブルなシステムを実現
- チップレット構成も可能
🔹 P870-Dのポイント
- CPUだけでなく、システム全体の構築に必要なコンポーネントも提供(例:TRコントローラー、デバッグ&トレース機能、セキュリティ機構 “WorldGuard” など)。
- SiFiveはCPU単体ではなく、システム全体の構成要素を顧客に提供する。
3. RISC-Vエコシステムの成熟と標準化
SiFiveは、「RISC-Vのリファレンス実装を提供すること」が使命としている。
① 標準仕様の策定
- RISC-Vの成功には「ソフトウェアの互換性」が重要。
- 例:RVA 23(RISC-Vの標準プロファイル)が策定され、ベクトル拡張やハイパーバイザーなどが必須機能に。
② サーバー向け標準化
- Armは、SBSA(サーバーベースシステムアーキテクチャ)やSBBR(ブートとランタイムの標準)を定義し、エコシステムを確立した。
- RISC-Vも同様に、サーバー向けの標準化を進めている。
4. ソフトウェア開発への投資
SiFiveは100人以上のソフトウェアエンジニアを抱え、エコシステム開発を推進。
① 主要な取り組み
- RISC-V対応Androidが完成し、OEM向けに提供開始。
- Canonicalと提携し、UbuntuがHiFive開発ボード向けに標準対応。
② オープンソース戦略
- ソフトウェアはオープンソース化し、ライセンス収益化はしない。
- 例:GoogleのRISC-Vベースのコーデック最適化を支援。
5. 最近の業界パートナーシップ
- Wind River:RISC-V対応の商用Linux「Alexia Pro」発表。
- Arteris:RISC-V用ネットワーク・オン・チップ(NoC)で協力。
- PQShield:ポスト量子暗号(PQC)対応のセキュリティ技術で提携。
6. 今後のロードマップ
製品カテゴリ | 既存製品 | 最新発表 | 今後の予定 |
---|---|---|---|
高性能CPU | P650/P670 | P870-D | 次世代Out-of-Order CPU |
AIプロセッサ | SiFive Intelligence | XMシリーズ | AI機能強化 |
組み込み | Essential Gen3 | Essential Gen4 | Essential Gen5(開発中) |
Automotive | ー | ISO 26262 / 21434対応製品 | 追加ラインナップ予定 |
SiFiveは、RISC-Vのリファレンスプラットフォームとしての地位を確立し、組み込みから高性能CPU、AI、Automotiveまで幅広い分野で市場をリードすることを目指している。
まとめ
- SiFiveはRISC-Vのリーディングカンパニーとして、標準準拠の高品質IPを提供。
- Armの組み込み市場撤退により、RISC-Vの優位性が加速。
- 高性能CPU(P870-D)、開発ボード(P550)、Automotive製品を次々と投入。
- エコシステム標準化とソフトウェア開発に注力し、サーバー・AI市場も視野に。
SiFiveは「RISC-Vのリファレンスプラットフォームの確立」をミッションに掲げ、今後もリーダーシップを強化していく。
発言者: John Ronco (SiFive プロダクト&マーケティング責任者)
所在地: イギリス・ケンブリッジ(元Armの本拠地に近い)
経歴:
- ArmでCPUグループのプロダクトマネジメントを長年担当
- SiFiveでは、RISC-Vの普及と顧客成功を促進