インテルのサイファイブ買収に関する噂について

インテルが、サイファイブ社を20億米ドル(2,200億円くらい)で買収を検討しているそうです。リスクファイブを代表する会社に、$2Bは安すぎる気もします。サイファイブ社は、自力でIPO狙っています。サイファイブ社が社員数が多い割に儲かっていなければ、インテルに買われエクジットするのも仕方がないのかもしれない。でも、勿体無い気がします。ある意味、リスクファイブの価値が低く見られています。

サイファイブ社はインテルのみならず複数の企業から買収提案を受けているとされている。サイファイブは、こうした際に、良くあるシナリオは、例えば10Bで他社からカウンタープロポーズされた時に、つい売ってしまう可能性もありますね。

ARMは、1985年の創立から、8年後の1993年に黒字化しましたた。創立13年目の1998年にロンドン証券取引所とNASDAQに上場しました。その時までに、モバイルチップマーケットを実質的に独占していました。1991年から2001年までCEO、2001年から2006年までChairmanを務めたロビン・サクスビー氏の独立精神が、大きく貢献していたと思う。

命令セット(ISA)は、半導体サプライチェーンの端から端までいかないと商品化されません。世界で一番回転率の悪いビジネスです。

ARMの事実上の所有者なったエヌビディア社のジェンセン・フアング氏に、すでに大昔になりますが、NV2, NV18などの開発で協力した際に、貴重な意見を頂きました。筆者は、日本企業でRISC命令セット(ISA)分野で仕事をさせていただいたためです。命令セットのフランチャイズは、どうあるべきかとアドバイスをされました。

フアング氏によると、半導体会社にとっても、IP会社にとっても、ソフト開発はロスアンドロスオペレーションである。セット開発企業が本来負担すべき費用を、半導体会社が支払うと破綻する。理屈はそうであるが、要所要所でソフトウエア開発がどうしても出てくる。リスクファイブのソフトウエア開発はコミュニティがやっています。この点でサイファイブはいい状況にいます。

日本の半導体会社がマイクロソフトとWIndows CEを開発した際に、マイクロソフトのビル・ゲーツ氏は、マーケットを共創するのだから、開発費の50%は命令セット(ISA)パートナーに負担させようとしました。誠に合理的な話だったのですが、最終的には、それでもマイクロソフトのWIndows CEの開発費は嵩み、マイクロソフト負担分が大部分になってしまいました。経費を減らすために、ターゲットとなる命令セット(ISA)をARMに絞った。

命令セット(ISA)をベースとするプロセサビジネスでは、ハードウエア設計 と ソフトウエア設計サイクルがあり、お金を注ぎ込んでも、開発期間が縮まらない。フレデリック・ブルックスの「人月の神話」(Myths of Man Months)にもあるが、人を増やすと逆に開発効率が下がり時間が余計にかかることもあります。

システム構成要素として、結局はソフトウエアが王様です。優秀なソフトウエア技術者は、処理速度を倍にしたり、消費電力を半分にしたりできます。ARM命令セット(ISA)のプロセサ開発サイクルは4年間に1世代進むペースでした。1年1世代を目指した国産命令セット(ISA)メーカでは、ソフトウエア開発サイクルが終わる前に次のプロセサが出てきてしまい、ソフトウエア開発がかえって遅れたように思います。過当競争の中でもARMだけは、きちんとハードウエア設計 のサイクルを ソフトウエア設計サイクル に合わせていました。

最近になって、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、台湾のアンデス社のASSP製品でのパートナーシップに続き、サイファイヴ社と車載半導体についてのパートナーシップを提携しました。このまま行けば、リスクファイブは、すでに製品が出ている組み込み、IoT応用だけでなく、PCとかサーバの応用にも顔を出すようになると思います。

そうした中で、どのように買収に対応していくのがいいのかは、なかなか難しい問題だと思いますが、とりあえずIPOを目指してもらいたいなと思っています。