第6版「RISC-V版ヘネパタ最終版6」邦訳 9/30のRISC-V Day会場で廉売。消費税割引!

チューリング賞受賞(2017年度)記念翻訳版 コンピュータ科学最高の栄誉であるチューリング賞をRISCアーキテクチャへの貢献により2018年に受賞したヘネシーとパターソンによる 『コンピュータアーキテクチャ 定量的アプローチ[第6版]』 ヘネシーはGoogleの親会社Alphabet会長、パターソンはRISC-V財団副会長かつGoogleのExtinguished Engineerとして、オープンなアーキテクチャRISC-Vを解説すると共に、Googleのウェアハウススケールコンピュータ(WSC)を総合的実例として本書で初めて世界に公表した。 本書はこのテーマの世界最高峰のテキストだが、2人による最後のブック形式の書と目されている。

訳者あとがき
2014年3月の『コンピュータアーキテクチャ 定量的アプローチ 第5版』の発刊から3年9か月後、2017年12月に、本書の原著であるComputer Architecture: A Quantitative Approach, Sixth Editionが世に出た。これまでMIPSアーキテクチャをベースにしていたものから、方針を大転換し、ほとんどの章においてRISC-Vをベースプロセッサにして書き換わり、さらに「Domain-Specific Architectures(領域特化アーキテクチャ)」という新たな章が加わった。そしてなんと、その翌年、原著者の2人ヘネシーとパターソンが、コンピュータ科学における最高峰「チューリング賞、2017年度」を受賞してしまったのだ。さらにはヘネシーはAlphabet社(Googleの親会社)の会長、パターソンはGoogleのDistinguished Engineerにも就いていた。これは心してかからねばならぬということで、第5版の翻訳メンバーの中から、3人で翻訳チームを組み、この第6版の翻訳に取り組むこととなった。この3人は以下の部分について分担して翻訳作業に当たった。 ●天野英晴:第1章、第2章、第3章、付録B、付録C ●鈴木 貢:第4章、第7章 ●中條拓伯:第5章、第6章、付録A チームを3人に絞ったのは、そのメンバーで御茶ノ水にあるコーヒーショップでざっと原著を眺めて、章・節構成などを前版と比較した結果、前述のRISC-Vへの転換と第7章のみの追加ということで、差分を取ればそれほど大した作業とはならないだろうと高を括ってしまった。しかしながら、その考えは甘かったことを後に痛感することとなった。 実は、第5版の翻訳を終え、編集の段階で手が加わり、校正作業の時に、その編集操作(敢えてこう言わしていただく)において、元の翻訳とは微妙に異なる技術的に誤った記述が散見された。したがって、第5版の最終稿の中で、原著と変更のない部分をそのまま転用することは危険であり、技術的・学術的に誤りがないかをチェックしながら進めなければならなかった。さらに加えて、原著においてもデータを新たなものに刷新したこともあったからか、致命的な誤りが信じられないくらい多数見られたのだ。つまり、この翻訳作業は英語から日本語に変換するという作業とともに、疑心暗鬼になりながら、常に疑いの目を光らせて進めていくという作業に終始し、これは極めて精神的に堪える作業となったのである。 現在コンピュータ設計に従事する技術者、この分野を将来背負っていく若い世代に、早く本書を届けたいと思いつつ、学内や学会などにおいて、責任のかかる任務を遂行しつつ、翻訳・校正に取り組む時間を確保するのが困難であったため、翻訳完了が予定より大幅に遅れてしまった。お叱りは覚悟しているが、上記の状況であったことをご理解いただきたい。 第5版と同様、技術的な点について原著の誤りを修正しつつ、翻訳ミスをできる限り排除する方向で翻訳、推敲、校正を重ね、ようやく完成に至ったが、まだ細かな誤りはあるかと思う。しかしながら、旬のうちに世に出すべく発刊を急ぐこととした。 本書を手に取る技術者、大学生、大学院生、研究者は、この分野に深い造詣を有している方々だと思われ、些細な誤りについては前後の脈略から判断できる方々であると信じている。 原著は、2人のチューリング賞受賞者のみによるものではなく、世界中のコンピュータアーキテクチャ研究者、設計者らとともに、最新の大規模高性能計算機を設計・実装・活用しているIT系大企業からの情報をもとにまとめられたものであり、研究論文、技術報告書にも引用されることも少なくないと思われる。したがって、間違った記述には慎重になる必要があり、本書での学術的・技術的な誤りについては、誤植とともに、読者となる方々と今後も情報を共有していくべく、以下の翻訳版情報サイトを準備していただいた。 http://www.am.ics.keio.ac.jp/wp/caqa6th 本書に関する誤植情報、最新情報、時に議論などを掲載していく予定なので、ご覧いただくとともに、情報を提供いただけると幸いである。また、このサイト等を通じて、積極的に情報を発信することで、世の中の誤解を正すことができればと願っている。 前版の「訳者あとがき」にも述べられていたが、本書は2人の著者の名前から日本では「ヘネパタ」と呼ばれ親しまれてきた。そのヘネパタの初期の頃は、「コンピュータをやさしく解説してくれる名著である」とか、「原文は分かりやすいので、直接当たった方が良い」と囁かれていた。さらに、「第3版以降は、コンピュータのカタログに堕してしまっている」といった誤解が世の中にはびこっていた。これらは、この第6版においもて、やはり全く当てはまらない。ヘネパタは他の工学系の専門書と同様、高度で難解な専門書であり、読んですらすら理解できるような代物ではないことは第6版でも同じである。 ヘネパタが名著である所以は、この版においても、膨大で徹底的な定量的評価をまとめた情報量によるとともに、アーキテクチャに関連する分野・技術に関して、その核となる技術とともに、それを支える周辺技術についても、しっかりと網羅されている点にある。また、本書の最初にある謝辞に記載されている査読者、委員会にある名前をご覧いただきたい。ACM、IEEEなどの難関な国際会議で招待講演、基調講演を担うような著名な方々の名前にお気づきいただけると思う。それとともに、旧版を含めての査読者の数は驚愕に値する。それでもなお、原著には見過ごされている誤りが多数残されていた。 本書の翻訳を批評したいのであれば、最低限原著と照らし合わせた上で行っていただきたく、世のサイトの匿名の口コミを読んだだけでそれを鵜呑みすることは避けていただきたい。 本書において理解しがたい部分があれば、翻訳のせいであると即断する前に、ぜひ上記の翻訳版情報サイトを訪れていただきたい。そして貴重なご意見をいただき、正誤表に記載するような貢献をいただければ、ご了解のうえ、翻訳版情報サイトとともに、本書の電子版に修正を反映させ、協力者の名前を記載させていただく予定である。 我々は本書の真価を世に問うべく、これからも世の中の誤解を正す使命をもとに時間の許す限り情報を発信し、電子版を進化させていき、恐らくこの第6版が最後となるであろう「ヘネパタ」を、誤りの無い、完璧なものになるよう進化させ、完成版を残したい。

タイトル:コンピュータアーキテクチャ[第6版]
サブタイトル:定量的アプローチ
2019年9月25日 初版第1刷発行
ISBN99784434264009
本体価格:8000円

A4並製/472ページ

著者:ジョン・L・ヘネシー(John L. Hennessy) 、デイビッド・A・パターソン(David A. Patterson)
訳者:中條拓伯(なかじょう ひろのり)、天野英晴(あまの ひではる)、鈴木 貢(すずき みつぐ)
発行:株式会社エスアイビー・アクセス
発売:株式会社星雲社